昨日実家の本棚を久しぶりに見ました。そのなかで「指揮者のすべて」という本があったので、久しぶりに頁をめくってみました。当時は興味のなかった(というか理解できなかったという方が正しいか、とにかく記憶にない)新星日響の団員の対談のところ、今読むと指揮者の苦労が改めて分かります。なかには指揮者が要求したことと違う演奏をしながら「ありがとうございます」と返ってきたりして、「この指揮者は何を聴いているのか」と思うこともあるそうです。
この本なかで、9人の評論家が3人ずつに分けて、それぞれのグループから名指揮者ベスト・テンをあげていくところがありました。あるグループは、ベスト・テンのなかにブルーノ・ワルターが入っていない。これは私には全く理解できないことである。シューリヒトがしっかり入っているところがあります。言わずと知れた宇野功芳氏のグループ。氏と一緒になったのは、金子健志氏と平野昭氏。まずはこの3人のランキング。
1.フルトヴェングラー
2.トスカニーニ
3.クナッパーツブッシュ
4.ムラヴィンスキー
5.ワルター
6.ミュンシュ
7.シューリヒト
8.クレンペラー
9.バーンスタイン
10.カラヤン
10人の顔ぶれを見ると、この本が出た当時1996年、この世になかった人ばかりになりました。バーンスタインやカラヤンもありましたが、もう当時すでに亡くなっていたのですね。ついこの間のことだと思ったのですが、月日が経つのが早いものだと改めて思います。3人とは別に司会者がいて、誰も現存しないことについて触れると、宇野氏が「文句出ないんじゃない」などと言っておられます。そしたら司会者がすかさず「シューリヒトを除いては」と言いました。そしたら金子氏がいいこと言われました。「シューリヒトは知らないだけで、知っているけど嫌いという人は居ないのでは」と。なるほど、これはなかなか的を得た表現だと思います。
19世紀生まれの指揮者は今の指揮者に比べてかなり強い個性を持っていることは、誰しも思うところでしょうが、シューリヒトも例外ではなくかなり強烈な個性を持っていると思います。ところがそのシューリヒトに関して言うと、「嫌い」という理由が浮かんでこないですね。そういう意味で誠に不思議な指揮者だと思います。
他の音楽ブログ