クラスターが発生し少なくとも9人が亡くなった富山市の老人保健施設・富山リハビリテーションホーム。
当時の施設内の状況が明らかになったとは言い難い状況の中、亡くなった入所者の遺族がチューリップテレビの取材に今の胸のうちを語りました。
「お悔やみの電話もなければ、いつ電話して代わってほしいと言っても、理事長・施設長はおられんというか、逃げ回っている。まずは謝罪なり、弔意を表してからやらないと」(入所者遺族の男性)
富山市に住む男性です。富山リハビリテーションホームに預けていた90代の義理の母を5月上旬に亡くしました。
「(義母が亡くなって)ガクッときたというか、今の施設の対応に対して怒り心頭」(男性)
穏やかな性格だったという義母。数年前に骨折をしてから車いす生活でしたが、健康状態は良好だったといいます。
「90歳を過ぎても基礎疾患は何もなし、認知症は少し進んでいたが、皆さんからは100歳まではかんかんだと言われていた」(男性)
義母の異変を知らされたのは、4月中旬。施設の職員から電話で連絡が入りました。
「38度台の熱が出ました」
その後、施設から連絡はなく数日が経った4月17日…
「性別は女性、80歳代。施設入所者、入所先は富山リハビリテーションホーム」(会見:富山市福祉保健部 酒井敏行部長)
富山市が会見を開き、施設内で初めての感染者が確認されたと発表されました。男性のもとにも、「施設内で感染者が出た」と施設から連絡がありましたが、この時点で、義母が感染しているかどうかは分かりませんでした。
その後、施設内で感染者の発覚が相次ぎ、家族は義母も感染したのではないか、と不安にかられ毎日、施設に問い合わせました。しかし…。
「PCR検査をしたのか、と聞いたら重い人からしているというのが19日の返事。なぜ病院に連れて行ってもらえないのか、どうなっているのかと…」
そのころ、施設内の状況について富山市は…
「施設内も大変混乱していて、事例が発生してその都度患者を移動させたりしているらしく、詳しい状況がつかめていない」(会見:酒井部長)
行政すら施設内の状況を把握できずにいました。
「なかなか電話がつながらない(代表者と連絡が取れない)。現場には責任者、代表者がいない」(会見)
結局、男性の義母が病院に搬送されたのは、発熱から10日ほど経った4月下旬。このとき39度台の高熱があり、搬送先の病院の医師からは「呼吸状態が悪くなっている」と説明を受けました。
病院に移り、ようやく義母が感染していたことがわかったといいます。
「大変ご迷惑をおかけし申し訳ありません」(恵成会 升谷敏孝理事長)
4月28日、施設側はようやく会見を開き、初動対応の遅れを認めて謝罪しました。
「私の施設でまさかこのようなことが起こっているとは。まさに私の認識の低さが。本当に私の落ち度であります」(富山リハビリテーションホーム 升谷厚志施設長)
そして、5月上旬、病院から義母が亡くなったと知らせを受けました。最期の別れもできないまま、遺体はすぐに火葬されたといいます。
「なんと言っていいか。まさかそういう目に、県内の22人の1人になるとは思わなかった」「(新型コロナで亡くなった人は)誰一人として(顔を)見ることはできないと聞いています。私も見てはいません」(男性)
施設の初動対応が早ければ義母は命を落とさずに済んだかもしれない…。
男性の頭からその疑念が消えることはありません。
職員を含め59人が感染し、少なくとも9人が亡くなった富山リハビリテーションホーム。
5月下旬、施設の内部が公開されました。落ち着きを取り戻したかに見える施設。ただ、失われた命が戻ることはありません。
「発熱者が複数出た時点でもっと早く対応をしていれば感染の拡大を止めることができたと思っています。本当に申し訳ないと思っております。引き続き、ご家族の声に耳をかたむけながら、施設の再建ができるようにつとめたい」(升谷理事長)
義母の死から1か月近くが経ちました。
いまだ男性のもとに施設側からの連絡はありません。
「無念というものは、ちょっと収まるところがなくて、何か日が経つに従って薄れるとか収まっていくと聞きますが、(私の場合は逆で)日が経つにつれて、怒りが増幅されていく。そういうふうな思いであります」
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