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手前味噌:富山の「ドンブラコ」

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    JUGEMテーマ:合唱


     私はこれまで4度、宇野功芳/アンサンブル・フィオレッティの「ドンブラコ」に接してきました。2009年9月の富山を皮切りに、同11月の神戸2010年9月の東京、そして今回の富山ラストです。他のプライヴェートなコンサートもありましたが、オープンなものはこれが全部だと思います。
     これらをずっと比べると、精度の高いレコード録音をそのままに実演に立ち向かった富山の第1回目演奏会は、何もかも完璧でこれ以上考えられない演奏が繰り広げられました。第2回目はちょっと慣れすぎてリアリティにいささか不足したでしょうか。第3回目は演奏は決して悪くなかったのですが、こちらは演奏前のトークが却ってネタばれになってしまって、面白さが半減してしまったような。ということでここまで3回を聴いて、完璧に近かった初演を超えること自体不可能とだと思いました。
     ですから正直のところ、今回の「ドンブラコ」は正直演奏面では多くを期待していませんでした。主催者の私としては、むしろ前半の曲に賭けていた、というのが本音です。実際に今回の第4回目はこれまでの3回に比るとミスは明らかに多い。ところがお客の反応はと言うと今回が一番良かったようです。10人程居た小中学生も、実に静かに熱中していたようで、それにつられて演奏者も気分よく演奏された様子。それにしても何が良かったのだろう、と不思議に思いました。
     そうしたなか、ようやく届いたホール・スタッフに録ってもらった録音を聴いてみました。そしたら随分驚いたのです。これまでの演奏は指揮者の造形で固められたものだったのに対し、今回の演奏には「適度な緩み」があるようです。演奏者がまるで観客とのキャッチ・ボールを楽しんでいる、といった感じがよく分かります。
     そう言われてみると、クラシック音楽の特に交響曲という分野は、指揮者のウェイトが大きくまず指揮者の思うように演奏しないと、良い演奏にならないのは道理です。ところが指揮者から見て100%の出来だったものが名演奏として残っているかと言うと、決してそうとも言えません。指揮者の指揮に奏者の心の込もった表現、こういうのを個性というのでしょうが、それが加わってこそ本当の名演が生まれいます。例えば宇野功芳氏の敬愛する名指揮者ブルーノ・ワルターは、指揮者の優位を主張しつつも軍司令官のように命令することなく、奏者の個性を大切にして、その奏者の心に響く形で音楽を作っていったと言われます。
     さて「ドンブラコ」はフィオレッティだけでなく指揮者にとっても無知の分野。あくまでCD録音用に歌と語りを徹底的に仕上げました。CD録音には演技は必要ありませんので、歌と語りに徹するのは道理です。そうしたなかで、2008年の11月にCD制作会社キングインターナショナルのプロデューサの前でお披露目が行われ、そこで私も宇野さんに呼ばれて立ち合わせてもらいました。そこで聴いて私は「これは舞台の上でもものになる」と直感して、2009年の初演にこぎつけました。
     同年の2月にCD録音が終わった後、9月の初演へ向けてスタートした訳ですが、その時にフィオレッティの団員たちはその間に作品に対して次第に魅せられていったと語っています。そうは言いながらも団員としては個性を出すまでには至らず、むしろ宇野氏の見事な統率のもと、実演の緊張感が加わった名演奏を生み出しました。これは初演としては出来が良過ぎたというか、こういうのができてしまうと前例にとらわれてしまい、新たな工夫を加えてみるもののなかなか効果が上がらない、という現象が起きてしまうようです。結局「ドンブラコ」の演奏も同年の神戸と翌2010年の東京初演まてで以後演奏されなくなってしまいました。その間私は母のこともあり事実上の活動停止状態に入りました。
     そうしたなかで私がもう一度やろうと思ったのは、「ドンブラコ」が本当は魅力ある作品なのに、フィオレッティの演奏会を行おうとする主催者側が取り上げないからです。とうも題名が悪いのか「ドンブラコ」では客を呼べないのが理由かも知れないが、それでは余りにも勿体ない話だと思います。どうせ富山は何をやっても客が入らないのだから、ここは客に媚びることなく舞台芸術からプログラムを組んでみよう、と思って「厳選プログラム」を組んで臨みました。立て続けに演奏した2009年〜2010年からみると、フィオレッティにしてみると随分経っての再演となりましたが、その冷却期間からこの作品を冷静に振り返ることができ、そこから団員各自、3年前に固められた造形から解き放たれて、次第に個性を発揮したのが今回の演奏になったのではないでしょうか。とにかく聴衆の心を最も捉えた「ドンブラコ」になったとともに、「ドンブラコ」を聴かずしてフィオレッティ語ること勿れ、という作品としての地位も確立できたのではないかと思います。
     今年4月の横浜定期でお知らせがあった通り、アンサンブル・フィオレッティは、もうそれ程長く活動するものではなく、また既に決まっている残された演奏会では「ドンブラコ」が取り上げられることはありません。それだけに今からでも演奏会を作って「ドンブラコ」を是非取り上げて頂きたいと思いますし、予定されている演奏会でも「ドンブラコ」にプログラムを差し替えたほうが、お客さんには喜んでもらえることは、断言できるのではないでしょうか。

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      ワルターの「運命」「未完成」
      「未完成」については、同曲演奏史上でもベストを争う至高の超名演と高く評価したい。
      • クラシック音楽ぶった斬り
      • 2012/08/17 3:38 AM
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